「モノが持つ力とは何であろうか?」
生活必需品とは別に、嗜好品と呼ばれる類のモノの場合「何故ソレを持つのか?」という問いに対する答は、多種多様なものとなろう。
 ここで少し考えてもらいたい。例えばあなたがシルバー・アクセサリーを自らの為に選ぶ場合、何百、何千という選択肢の中から何故、それを選んだのか。何故それが選ばれたのか。高価であるとか、希少である、という価値基準を一概に否定することはできない。しかし、モノが人を惹き付ける、その本質的な力を語ることなく、そのような基準でのみ測ることには、注意をはらいたい。
 ブランド「一馬」(以下「一馬」は全てブランド名を指す)は、1998年、それまで一点物のみを創って来た工芸作家 長井一馬氏の作品を、JAP工房がプロデュースするスタイルで、生みだされた。
     

 特定のモチーフを持たないことは「一馬」の特長の一つである。そして、どんなモチーフであったとしても現出する世界観は、全て「一馬」として成立している。当たり前の事のように思えるが、一貫性を維持し得たのは、「一馬」以前から氏が一点物を造形する上で培って来たオリジナリティとそれを具現化する技術力に因る所が大きい。
 このページで取り上げる作品は、「一馬」発足にあたり用意されたモノの中から選ばれた、特に個性際立つ4点である。個々の作品が持つ繊細さ、大胆さ、過激さ或いはモチーフの奇抜さ等、発表されてから数年経つ現在においても尚、その圧倒的な存在感を湛えている。
 更に言えば、リング本来の在り方という常識的な観点から、その逸脱した個性は、現在に至る作品の中でも群を抜いたものであろう。